第25章 End of Sorrow…
俺のプランはこうだ。
劇場の箱自体は残し、ストリップ劇場としての看板は外す。
その後、本格的なレビューや演劇が行える劇場として再スタートをさせる。
大掛かりな改修工事を済ませたばかりの劇場だ。
そのままにしておくのも、ましてや取り壊しなんてことは、端から考えちゃいない。
どうにか劇場をそのまま活かせるような方向でプランを練って来た。
当然、そのための手回しもある程度は済ませてある。
勿論、現存するダンサー達の処遇についても同様に、だ。
ただ一人…
どうしても了解を得なければいけない相手…
それが現状劇場副支配人でもある相葉雅紀だ。
「で、だな…、お前に一つ頼みたいことがあるんだ」
「なになに? 俺に出来ること?」
“チワワ”を床に下ろし、雅紀がテーブルに身を乗り出すから、俺も同じようにテーブルに身を乗り出した。
ともすれば息が触れ合う距離に、一瞬目の前の雅紀に、智の顔が重なり、ドクンと胸が強く脈打った。
「雅紀、お前に新しくなった劇場の支配人を頼みたい」
「な〜んだ、そんなこと…って、ええっ?」
今度こそ正真正銘目を丸くした雅紀は、勢い良く椅子から立ち上がると、
「無理無理、俺なんか絶対無理だって…。それに翔ちゃんはどうすんのさ…」
壊れたロボットみたく、首を何度も横に振った。
「俺か? 俺のことは心配すんな。劇場経営から完全に手を引くわけじゃない」
雅紀に運営を任せた後も、劇場には関わっていくことに変わりはない。
ただ関わり方を変えるだけのことだ。
あの場所は、俺にとっても…そして智にとっても特別な場所だ。
その場所から完全に離れる、なんてこと…俺には出来ない。
「なあ、受けてくんねぇか? つか、お前にしか頼めないんだ。頼む、雅紀」
俺は両手の平をテーブルに着き、額が擦り付くくらいに頭を下げた。
「分かった…。翔ちゃんがそこまで言うなら、受けてもいいよ。ただ…さ…」
「ただ…、なんだ?」
「俺一人じゃ不安…って言うかさ、自信ないって言うかさ…」
副支配人と支配人とでは、立場も違えば、背負う重圧の差だって歴然だ。
全ての責任が支配人の肩にかかってくるのだから、雅紀の感じる不安はもっともだと思う。