第25章 End of Sorrow…
雅紀のことだから、もっと大袈裟に驚くかと思っていた。
でも意外にも雅紀は落ち着いていて…
「そっか、それもいいんじゃない?」
そう言って、持ち前の爽やかな笑顔を浮かべた。
「随分簡単に言うんだな?」
あまりにあっけらかんとした雅紀の様子に、俺の方が戸惑ってしまう。
「だってもう決めたんでしょ? だったら俺が今更何言ったって無駄じゃん。それにさ、翔ちゃんのことだから、相当迷って、悩んだ上で出した答えなんでしょ?」
「まあ…な…、そうなんだけど…さ…」
「じゃあ尚更俺が口出すことじゃないじゃん? 違う?」
普段、そのチャラい見た目のせいか、何も考えてなさそうに見えて、案外思慮深いのがこの相葉雅紀という男だ。
おまけに妙に勘も鋭かったりするから、
「それで? 劇場畳んでどうするの? 翔ちゃんのことだから、何か考えがあるんでしょ?」
俺の考えなんて見透かされてるような気さえする。
雅紀とは学生時代からの付き合いだから、それも仕方ないのか…
「実はさ、前々から考えてたことなんだけどな…」
俺は以前から考えていたプランを雅紀に話して聞かせた。
雅紀は頷きながら俺の話を聞いては、その度に目を輝かせたり丸くしたり…
感情表現の豊かな奴だから、雅紀の顔を見ているだけで、自然と俺も饒舌になる。
そして全てを話し終えた俺は、雅紀の顔色を窺うように覗き込んだ。
ずっと温めてきたプランだ。
自信が無いわけじゃない。
でもそれは俺自身を満足させるためだけの物で、他人の反応はどうしたって気になる。
雅紀に受け入れられなければ、全ては振り出しに戻る。
「どう…だ?」
俺は雅紀に意見を求めた。
すると雅紀は組んでいた腕を解き、持ち前の爽やかな笑顔を俺に向けた。
「いいじゃん、それ。俺は賛成だよ」
「マジで? マジで賛成してくれるか?」
「勿論だよ。だってそれならハコは活かせるし…。ただ、今いる踊り子達をどうするか、だけど…」
雅紀の心配は最もで…
どんな形であれ劇場を畳むとなれば、専属契約を結んでいた数人のダンサー達が路頭に迷いかねない。
ただ俺だってダンサー達のことを考えていないわけじゃない。
万全とは言えないが、対策は立てるつもりだ。