第25章 End of Sorrow…
「どうして、か…」
近藤がフッと笑みを浮かべる。
「そうだな…、俺と似てる、からかもしれないな…」
「貴方と智が…ですか?」
俺の見たところだと、智と近藤には共通点は元より、似たとこなんて何一つないようにも思える。
もし唯一似ている箇所を上げるならば、それは智も近藤も“無口”だ、ってことくらいか…
「意外…って顔だな」
「いえ、そんなことは…」
「まあそう思うのも無理はないか…。俺も今でこそこうだが、若い頃はそれなり色々経験していてね…。勿論、智と同じような経験をしたこともね…。だからかな…、どうしてもあの子を他人とは思えなくてね…」
若くして企業のトップに立つ…、その事がどれだけ大変なことなのか…、こんな俺にだって少しは分かる。
相当な辛酸を舐めで来たに違いない。
そんな人が智の客だったこと、そして、智の傍にいてくれたことに、今は感謝の気持ちすら感じる。
この人がいなかったら…
もしかしたら智はもう生きていなかったかもしれない。
この人がいてくれたから…、だから智は…
俺は近藤に礼を言うと、また連絡することを約束して見送った。
でも俺が近藤の手を借りることは、恐らくはないだろう。
もし再び近藤に会うとしたら、その時は智が戻ったことを伝える時だ。
俺は近藤が出て行ってすぐ、荷解きをする間もなく雅紀を部屋に呼びつけた。
劇場副支配人でもある雅紀に、ある決断を告げるためだ。
元々動物好きな雅紀は、部屋に入るなり飛び付いて行った“チワワ”を抱き上げると膝の上に乗せた。
「で、何なの、話って」
膝の上の“チワワ”を撫でながら、雅紀が不意に真剣な顔を見せる。
俺が雅紀を部屋に呼ぶことは滅多にないから、雅紀も何かを察しているんだろう。
「実はな、ここ最近ずっと考えていた事なんだが…」
「うん…」
「劇場…畳もうと思ってんだ」
思いつきや、投げやりになったから、ってわけじゃない。
智が俺の元を去ったあの日から、頭のどこかでずっと考えていた事だった。
ただ実際、こうして口にすることになるとは…思ってなかったけど…