第25章 End of Sorrow…
翌日俺は朝早くから、近藤の家に持ち込んだ荷物を纏めた。
長居するつもりはなかったから、そうでもないと思っていたが…、想像していた以上に荷物は多くて…
「マンションまで車で送ろう」
結局近藤の手を借りることになってしまった。
智の荷物も一緒にバッグに詰め込んだから、当然と言えば当然かもしれないが…
それから…キャリーバッグの中で目をキョロキョロさせるコイツも…荷物が増えた要因の一つなのかもしれない。
「なんかすいません。近藤さんも忙しいのに…」
「いや、構わないよ。丁度俺も君とゆっくり話がしたいと思っていたからね」
「俺…と…ですか?」
俺が聞くと、近藤さんは少し肩を竦め、
「なぁに、大したことじゃないさ。ただね、あの子の泣き顔を見たくなくてね…」
そう言って、少しだけ顔を赤らめた。
「あの子…って…、ニノのことですか? あ、まさか近藤さん、ニノのこと…を…?」
「まあ…恥ずかしい話だが…ね…」
そうか、そうだったのか…、だから…
元々、智と近藤の関係は、男娼と客でしかなかった筈だ。
いくら何度か身体を重ねたとはいえ、ここまで親身に…、しかも薬物が絡んでいるとなれば、自分の身も危うくなる可能性だって否めなかった筈なのに、生活の面倒までみるのには、何かしらの理由が必要だとは思ったが…
まさかその理由が、他でもない“ニノ”だったとはな…
近藤のニノを見る目には、何か特別な感情が込められているとは、薄々気付いてはいたが、まさかね…
でも近藤になら…、あの智が心を許したこの男になら、ニノを託せる。
「近藤さん、ニノのこと頼みます。アイツ、今まですげぇ苦労して来たんです。大人の勝手な都合で、散々辛い目にも合わされてきた奴なんです。だから…とうかアイツを、ニノを幸せにしてやって下さい。お願いします」
俺は、ハンドルを握る近藤に向かって頭を下げた。
「ああ、任せろ」
短いけれど、力強さを感じるその一言に、俺の肩が少しだけ軽くなったような気がした。