• テキストサイズ

踊り子【気象系BL】

第25章 End of Sorrow…


翌日俺は朝早くから、近藤の家に持ち込んだ荷物を纏めた。

長居するつもりはなかったから、そうでもないと思っていたが…、想像していた以上に荷物は多くて…

「マンションまで車で送ろう」

結局近藤の手を借りることになってしまった。

智の荷物も一緒にバッグに詰め込んだから、当然と言えば当然かもしれないが…

それから…キャリーバッグの中で目をキョロキョロさせるコイツも…荷物が増えた要因の一つなのかもしれない。

「なんかすいません。近藤さんも忙しいのに…」

「いや、構わないよ。丁度俺も君とゆっくり話がしたいと思っていたからね」

「俺…と…ですか?」

俺が聞くと、近藤さんは少し肩を竦め、

「なぁに、大したことじゃないさ。ただね、あの子の泣き顔を見たくなくてね…」

そう言って、少しだけ顔を赤らめた。

「あの子…って…、ニノのことですか? あ、まさか近藤さん、ニノのこと…を…?」

「まあ…恥ずかしい話だが…ね…」

そうか、そうだったのか…、だから…

元々、智と近藤の関係は、男娼と客でしかなかった筈だ。

いくら何度か身体を重ねたとはいえ、ここまで親身に…、しかも薬物が絡んでいるとなれば、自分の身も危うくなる可能性だって否めなかった筈なのに、生活の面倒までみるのには、何かしらの理由が必要だとは思ったが…

まさかその理由が、他でもない“ニノ”だったとはな…

近藤のニノを見る目には、何か特別な感情が込められているとは、薄々気付いてはいたが、まさかね…

でも近藤になら…、あの智が心を許したこの男になら、ニノを託せる。

「近藤さん、ニノのこと頼みます。アイツ、今まですげぇ苦労して来たんです。大人の勝手な都合で、散々辛い目にも合わされてきた奴なんです。だから…とうかアイツを、ニノを幸せにしてやって下さい。お願いします」

俺は、ハンドルを握る近藤に向かって頭を下げた。

「ああ、任せろ」

短いけれど、力強さを感じるその一言に、俺の肩が少しだけ軽くなったような気がした。
/ 426ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp