• テキストサイズ

踊り子【気象系BL】

第4章 Asymmetrical…


「だーめ! 智踊りたいんでしょ? だったら俺の言うこと聞いて? ね?」

俺の手からメイク落としを取り上げ、背中から包み込むように抱きしめられた。

「俺達の仕事ってさ、大勢…ではないけど、客の前で裸見せてさ、とてもじゃないけど人様に威張って言える仕事ではないけど、でもダンサーであることに違いは無いわけじゃん? だったらさ、見てくれなんて気にする必要なくない?」

確かにニノの言う通りだと思う。

所詮ストリッパー…、それは紛れもない事実。

でも…それでも俺はダンサーであり続けたい。

いや、そうあり続けなきゃいけないんだ…俺が殺したアイツのためにも…

それが例え、オナニー目的のイカれたエロ野郎達の前であろうとも…

「分かったよ…、分かったから、手ぇ離せ」

俺は肩に回ったニノの華奢な腕を払い落とし、再び姿見に向かうと、鏡越しにニノを睨み付けた。

大体、俺とそう大して背丈も変わんねぇくせに…なんなら、ニノの方が俺なんかよりよっぽど華奢なくせに、そんなニノの腕に包まれるなんて心臓バクバクさせてるなんて…ありえねぇし…

「くく、智はやっぱそうでなくちゃ」

「うっせーわ…」

クスクスと肩を揺らすニノを他所に、俺は鞄から取り出した写真立てをいつものように鏡の前に置くと、

「行ってくるから…」

写真の中で俺に向かって笑いかける潤に言った。

普段と変わらない儀式をする俺を、ニノが複雑な顔で見守る。

分かってる…

いつまでも過去に縛られてる俺を、ニノが見ていたくないことなんて、いくら鈍感な俺にだって分かってる。

でもな…、やっぱ忘れるなんてこと出来ないんだよ、俺には。

「行こうか」

「あ、ああ…」

俺は半ばニノに引き摺られる格好で階段を降りた。
/ 426ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp