第4章 Asymmetrical…
俺とニノとでは、背格好こそ似てはいるけど、雅紀が言う程外見は似てはいない…と思う。
そのニノと俺が一緒に踊る、なんてこと今までただの一度だって考えたこともなければ、想像したことだってなかった。
それに俺にはずっと決めていた事があったから…
潤以外の奴とは、どんな理由があろうとも一緒に踊らない、って…
でも今回ばかりはどうしようもなかった。
俺から踊ることを奪われたら、俺は…生きて行けないから…
場所なんてどこでもいい…、踊ることさえ出来ればそれでいい。
ニノのためでも、勿論劇場支配人である翔のためでもない、俺は俺のために、ニノと踊る事を了承した。
でもな…
「この衣装はなくねぇか?」
普段はプライベートは勿論の事、ステージ上ですら身に着けることのない、ショッキングピンクの衣装には、正直戸惑う。
ニノは「双子コーデ」とかなんとか言って浮かれてるけど、男二人で双子コーデもクソもあったもんじゃねぇ…
「そう? 可愛いと思うけどな」
「お前はな? だけど俺には似合わねぇって…」
「そんなことないよ、智だって可愛いよ? ほら♪」
わざわざ楽屋の片隅に立てかけてあった姿見を持ち出し、俺の前に立てた。
「嘘…だろ…?」
これが…俺…?
いつもと違うケバいメイクに、いつもとは違う派手な衣装…
そこには明らかにいつもと違う俺の姿が映し出されていて、俺は俺自身の目を疑った。
「や、やっぱ辞めようぜ? 俺、無理だわ…」
こんなの…まるで色気だけを振り撒いて男に媚を売るしか脳がない、安っぽい商売女と同じじゃねぇか…
こんなの…俺じゃない。
俺はメイク落としに手を伸ばした。