第24章 A piece…
俺はいつしか“翔”の隣で眠るようになっていた。
“翔”の隣で、“翔”の腕に包まれていると、不思議と良く眠れたし、時々衝動的に起こる薬への欲求も、自然と起こらなくなっていた。
それから“近藤”を求めることも…
満たされていた…んだと思う。
自分でも怖くなるくらい、幸せで…、暖かくて…
そう…
幸せな反面、俺は怖かった。
いつか…、いつの日か、この幸せで暖かな時間が消えてしまうんじゃないか、って…
指の隙間から零れ落ちてしまうんじゃないか、って。
だから、“翔”がどんな仕事をしているのか…
“翔”の過去を…
“翔”が、俺にとってどんな存在だったのか…
聞くの知るのが怖かったし、あえて知ろうともしなかった。
そうすれば、俺はずっとこの腕の中で笑っていられる。
「過去に何があったかなんて関係ない、また一から始めればいい。出会った頃のように…」
そう言った“翔”の言葉を信じよう、と…
だから俺は決めたんだ、
過去へ繋がる扉の鍵は開けずに生きて行こう、と…
二重にも三重にも鍵をかけて、二度と開くことはないと…
でも“鍵”は、俺が思っているよりも、うんと近い場所に転がっていたんだ。
そして、その鍵を開けたのが、まさか“翔”自身だったなんて…
思ってもいなかった。
きっと“翔”もそうだったと思う。
凄く…、それまで見せたことのないような、酷く動揺した顔をしていたから…
暴れるでもなく、かと言って泣き喚くでもなく、ただ静かに零れる涙もそのままに、今にも意識を飛ばそいとした俺を、ニノと近藤が慌てて抱き留めた時も、翔だけは微動だにせず…、ただただ困惑の表情で見ていたから…
もうここにはいられない…
一度堰を切って溢れ出てしまった過去の記憶は、もうどうやったって止めることは出来ない。
「殺して…」
不意に口をついて出た言葉に、近藤が俺の頬をピシャリと叩いた。
それでも俺は朦朧とする意識の中二人の腕を振り切った。
「殺せよ…! 頼むから…殺して…」
こんな穢れた身体を…、許しがたい罪を冒した俺には、愛される資格なんてない。
生きている資格なんてないんだ…
だから…