第23章 Moving on…
そうして始まった、智を含めた、近藤とニノとの共同生活。
それは俺の想像していた以上に壮絶…、とまではいかないまでも、薬物依存の成れの果てをまざまざと見せ付けられているような…、そんな毎日だった。
それまで大人しく絵を描いていたかと思ったら、突然火が付いたように叫びだし、暴れ狂う智を、近藤とニノが二人掛りで抑え込む姿は、やっぱり見ていても胸を締め付けられる思いで…
なのに何も出来ない俺は、その光景をただ見ていることしか出来ず…
あれだけ強く固めた決意は、一体何だったんだろうと、自分自身を疑いたくなる時だってなかったわけじゃない。
中でも、毎夜…というわけではないが、時折近藤の部屋から漏れ聞こえる、智の嬌声とも言える声には、正直耳を塞ぎたくなった。
愛する男が、他の男に抱かれて、歓喜の声を上げている…
それだけで、俺は近藤を殴り殺してやりたいとさえ思った。
でもそれが、近藤の言う“見たくない姿”なのだとしたら…、俺はそれさえも受け入れざるを得ないんだと…、俺が耳を塞いでいれば済むこと…、と自分に言い聞かせた。
ニノ曰く、智が近藤に抱かれているのは、あくまで“仕事”としてだと言った。
俺の元にいなかった空白の時間、智はそうやって生きて来たんだと…
そうすることでしか、自分の存在する意義ってやつを見いだせなかったんだと言われてしまっては、嫌でもその現実を受け入れるしかなかった。
ただ俺にだって、理性だけてはどうしようもなくなる瞬間ってのがあるわけで…
一度は仕舞った筈の情欲が、ムクムクと目覚め始めそうになるのを、必死で堪えた。
寧ろ、そうでもしないと、とても耐えられそうになかったのかもしれない。
それでも、智がいる生活は、それまでの暗く沈んでいた生活とは違って、とても楽しくて…
時折見せてくれる智の笑顔が、冷え切った俺の心に温もりをくれた。
幸せだった。
たとえ智が俺を見ていなくても、傍にいる…
智の呼吸を間近で感じられる…
それだけで幸せだった。