第23章 Moving on…
それにしても、パーティー会場で何度か顔を合わせただけの男が、どうして…?
俺の疑問は、次に男の口から発せられた、
「智は今俺の所にいる」
その一言によって払拭された。
「智が…? どうして…」
ついこの間貴族探偵から受けた報告では、智はまだあの男…松本潤の元にいると聞いていたのに…?
「どういうことだ…」
俺は飄々とした様子で紅茶を啜る貴族探偵に視線を向けた。
説明しろと言わんばかりに…
「まあまあ、少し落ち着きませんか? 急いては事を仕損じますよ?」
落ち着け…、か…
冷静さを欠いているのは、俺自身分かり過ぎる程分かっている。
智が絡んでいるとなれば、尚のことだ。
「翔ちゃん、座って?」
雅紀に言われて、漸く自分が立ち上がっていることに気がつくくらいにね…
「すみま…せん、つい取り乱してしまって…。それで、どうして智があなたの所に? それに今朝のニュース…、あれは一体…」
非礼を詫びると同時に、俺は再度同じ質問を繰り返した。
「ほお…、ニュースをご覧になったのですね? ならば話は早い。 山本、詳しく説明して差し上げなさい」
空になったカップを受け取り、山本さんがコホンと咳払いをしてから、ファイルのような物を手に一歩前に進み出た。
山本さんは淡々とした口調で、ファイルに綴じられた分書を読み上げた。
その間、誰一人として声を発することはなかった…というよりは、近藤は大方の事情を把握しているからなんだろうが、俺と雅紀に関しては声も出ない程、それほど大きな衝撃を受けていた。
それこそ目の前が真っ暗になるくらいの衝撃を…
「今朝のニュースについては以上でございます。続きまして、大野智様のことについてですが…」
ファイルを閉じた山本さんが、近藤に目配せをする。
それを受けてか、近藤はそれまで組んでいた足を解き、胸のポケットから一枚のメモ用紙を取り出し、テーブルの上に置いた。
そこには住所らしき物が書かれていて…
「これ…は…?」
酷く掠れた声で問いかけた俺に、
「智は今ここにいる。ニノ君も一緒だ」
そう答えると、キッと顔を引き締め、
「ただ…」
と、続けた。