第21章 Fade away…
眠ってしまうのが怖くて、近藤がしっかり熟睡しているのを確認してからベットにを抜け出た。
ジャンパーのポケットから財布を取り出し、更にそこから小分けにしたアレを抜き取った。
備え付けの冷蔵庫から缶コーヒーを取り出し、プルタブを引くと、小分けにした粉末を少量…、冷たいコーヒーに混ぜた。
ゴクリ…、と息を吞んでから、缶の飲み口に口を付け、ゆっくり缶を傾けた。
缶コーヒー特有の甘ったるさに顔を顰めながらも一気に飲み干した俺は、キュッと握った拳で唇を拭い、フッと息を吐き出した。
その時、
「智…? 眠れないのか?」
背後でギシっとベッドが軋み、近藤が身動いだのが気配で分かった。
見られ…た…?
缶を持った手が自然と震える。
そして、物音一つも立てずに近付いて来た気配に背中から抱き竦めるれた瞬間、俺の手から滑り落ちた缶が床でカランと音を立てた。
「どうした、そんなに驚いて…」
「べ、別に…何でもねぇよ…」
俺は、咄嗟に近藤の腕からすり抜けると、床に転がった缶を拾い、ゴミ箱に放り込むフリをして
そうでもしなきゃ、この激しく打ち付ける鼓動に気付かれてしまいそうだったから…
「眠れないなら、少し話でもしないか?」
二つ並んだベッドの一つに腰を下ろし、ナイトテーブルの上に置かれた照明を点けた。
途端に明るくなった部屋の中、俺は近藤に、きっと青くなっているだろう顔を見られないよう、下を向いたままでもう一つのベッドに腰を下ろした。
「話って…? さっきの話ならもう…」
「いや、そうじゃなくて、俺の話をしようかと思ってね…」
「アンタの…?」
ベッドとベッドの僅かな隙間を挟んで近藤と向かい合った俺は、俯いた顔はそのままに、視線だけで近藤を見上げた。
「そう、俺の…。俺には実は、年の離れた弟がいてね…。正広って言うんだが…、智と同じでとても踊りの上手な子でね…」
「へ…え…、それで…?」
別に近藤の過去に興味なんてなかったし、ましてや弟の話なんて…、どうでも良かった。
でも耳を塞ぐ気にもなれなくて、俺は適当に相槌を打ちながら、近藤の話に耳を傾けた。