第3章 Collaboration…
支度を済ませた智と一緒に翔さんの車の後部シートに乗り込んだ俺は、最終確認とばかりに智の額に手を触れた。
うん、熱はない。
「ところで…、リハの時間そう多く取れねぇけど、大丈夫なのか?」
バックミラー越しにサングラスをかけた翔さんの視線が俺達に向けられる。
常に完璧を求める翔さんだから、それが例えば付け焼き刃であったとしても、ステージに立つ以上手抜きは許されない。
それは分かってるんだけどな…
大丈夫か…、と問われれば、胸張って“大丈夫”って言える程の自信は…俺にはない。
俺は返事に困った挙句、隣の智の肘を小突き、翔さんに気付かれないように救いを求めた。
すると智は小さくは息を吐いてから、
「大丈夫なんじゃね…」
と、さも面倒臭そうに呟いたきり、顔ごと視線を窓の外に向けてしまった。
そして翔さんも、
「智がそう言うなら心配することはなさそうだな」
そう言って濃い色のサングラスの向こうで目を細めた。
智に対する絶対的な信頼…なんだろうな。
尤も、そうじゃなかったら、俺が一緒に踊りたい、って言った時だって、あっさり許可したりはしないか。
「あ、でね相談なんだけど、曲と衣装は俺に任せて貰っていい?」
衣装、って言ったって最初にちょろっと着るだけで、後はほぼ素っ裸なんだけどね?
でも折角智と踊れるんだから、特別なステージにしたいんだ。
「ダメ…かなぁ?」
何とかこちらを振り向かせようと袖を引っ張る俺に、智はやっぱり面倒臭そうに、
「別に何でもいいよ…」
窓の外を向いたまま答えた。