第19章 Clue…
「急に呼び出しちゃって悪かったね。予定あったんじゃないの?」
雅紀に誘われたのが余程嬉しかったのか、目の前に座った少年は顔を赤らめて首を横に振った。
「僕、あまり指名付かなくって…。だから電話貰えて凄く嬉しかったです」
そう言うと、少年は歯に噛むように笑った。
純粋に気に入ったから…じゃないのが、申し訳なく感じる。
雅紀も多分同じ気持ちなんだろうな…、いつもは爽やか過ぎる笑顔が、どこか引き攣っている。
「実は、えっと…聡君…だったかな、今日君に来て貰ったのは、電話でも伝えた通り、聞きたいことがあってね…」
「はい、でもあの…、僕なんかでお役に立てるんてしょうか…?」
言われて俺は雅紀の脇腹を肘で小突いた。
たまたま持っていた名刺に、携帯番号が書かれていたから…なんてことは、それがたとえ事実だとしても、言えない。
勿論、上手い言い訳なんて物も出てこない。
雅紀に任せるのがベストだ、って訳だ。
思った通り、雅紀は一瞬慌てた様子を見せたが、
「と、とんでもない、十分だよ。それに俺ももう一度君に会いたいと思ってたからさ」
流石だぜ…、上手いこと切り抜けやがった(笑)
これには聡も赤くなった顔を更に赤くするしかなくて…
「そ、それで僕に聞きたいことって? 僕に答えられることなら、何でもお答えします」
俺達の思惑なんてまるで気にすることなく、運ばれて来た苺が山盛り乗ったパフェに目を輝かせた。
単純な奴で助かった…
俺は聡の意識がパフェに注がれている隙を狙って、胸ポケットに忍ばせたボイスレコーダーのスイッチを押した。
「あの、食べても?」
「ああ、構わないよ。なんなら、もう一つ頼んどくか?」
「いいんですか? じゃあ…」
スプーンを手に、差し出したメニューを食い入るように見る聡。
対して雅紀の顔はどんどん青ざめて行く。
そりゃそうだ、俺同様、雅紀の懐事情だってかなり厳しい筈だからな。
ただ、聡から情報を得るには背に腹はかえらない。
「ところで、君はどうしてあの店で働こうと思ったのか…教えてくれるか?」
大粒の苺を口一杯に頬張る聡に問いかけた。