第19章 Clue…
親父さんは何も言わず、開け放った窓から外の風景を眺めては目を細めた。
そして徐ろにこちらを振り返ると、
「下でゆっくり話しましょうか。ここにはあの子の思い出が多すぎて…」
苦笑を浮かべながら、開けたばかりの窓を閉め、カーテンを引いた。
俺はアルバムと、智が使っていたとされる携帯電話を手に、親父さんの後を着いて階下へと降りた。
リビングに入ると、前もって準備してくれていたのだろうか、お袋さんがにコーヒーを出してくれた。
「あの…、その松本潤と言うのは…?」
お袋さんが腰を落ち着けるのを待って、俺は話を切り出した。
「ああ、智の高校の時の同級生です。私らも仕事仕事の毎日で、あの子が出てってから、携帯のやり取りを見て知ったんですがね…、どうも趣味が同じで意気投合したとか…」
「では、彼もダンスを?」
俺の問いかけに二人が揃って頷く。
「そうです。お互い何か惹かれる物があったんでしょうな…。初めは友情だった物がいつの間にやら…」
その先を濁すのは、息子の恋人が男だった、という事実を認めたくないからだろうな…
「で、でもちょっと待って下さい。俺が智から聞いた話だと、彼は交通事故で亡くなったと…」
少なくとも俺も、勿論智自身もそう信じていた。
その彼がどうして…
「それは…」
二人が顔を見合わせ、そして観念したように小さく息を吐いた。
「実は事故の後、あちらのご両親から、もうこれ以上関わってくれるなと言われましてね…。それはもう酷い言いようで…」
松本潤って奴がどんな奴かは知らないが、そういった場合どんな台詞が飛び交うかは、聞かなくたって想像はつく。
どうせ、誑かしたのはそっちだ、だとかそんなモンだろ…
「それで智に、“彼は死んだ”と嘘を…?」
「はい。日本を離れると言われたので…」
なるほどな…、智はその言葉を信じたってわけか…
あの…、馬鹿が…
素直にも程があんだろうが…
そんなことのために、アイツは…
いや、智にとって潤の死はそれほど大きな事だったんだと思う。
だがしかし、だ…
もし…、もしも、智が本気で潤のことを愛していたのだとしたら…
アイツが死を選ぶのも無理はねぇか…
智はそういう奴だから…