第18章 Emotion
外の空気が流れ来んだせいか、急に冷たくなった空気に身体がブルりと震えた。
「寒っ…」
さっきまで異常なくらいに火照っていた身体が、今はすっかり冷え切っている。
俺は床に散らばった服を引き寄せると、ノロノロと起こした身体に纏った。
本当はシャワーくらい浴びたかったけど、ふと見上げたテーブルの上の料理が、自分の身体以上に冷えているのが悲しくて…
俺はレンジの中に皿ごと料理を放り込むと、お椀の中で分離してしまった味噌汁を鍋に戻した。
ガスコンロに火をつけようとしたその時、耳の奥に何かが詰まったような…、まるで水中にいるような感覚と、続けて襲った軽い眩暈に、俺は思わずシンクに手を着き、片方の手で耳を押さえた。
まただ…
ここ数日、時を選ばずに突然襲ってくるこの感覚に、流石の俺も不安を感じないわけじゃない。
きっと身体が疲れているだけだ…
一日と空けずセックスしてりゃ、目に見えないだけで疲労は身体に蓄積されて行く。
ましてや受ける側の身となれば、尚更身体への負担は大きい。
その上慢性的な睡眠不足も続いてるし…
きっとそのせいだ、大したことはない…
そう思っていた。
でもそうじゃなかったんだ。
いつの間に起きてきたのか、俺の横にニノの気配を感じた時、俺は漸く自分の身に何が起こっているのか気付いた。
でも俺はそのことをニノに悟られたくなくて、
「腹、減っただろ? 飯にしようぜ?」
俺は無理矢理作った笑顔で平静を装った。
有難いことに、寝起きのニノは俺の不自然さを疑うことなく、グツグツと音を立てる鍋の火を止め、鼻をクンと鳴らした。
「ねぇ、もしかして誰か来た?」
てっきり味噌汁の匂いを嗅いでいるモンだとばかり思っていた俺は、そう言われて慌てて首を横に振った。
潤がここに来た、なんて…、口が避けても言えねぇ…
「柔軟剤変えたからじゃね? ほらアイツ…、光とか言ったっけ? アイツ、俺が頼んだのと違うの買ってきやがったからさ…」
俺は咄嗟に思い付いた言い訳を並べ立て、バスルームの横に置かれた洗濯機の上を指差した。
「ふーん、そっか…。あーあ、腹減った。早く飯食お?」
「ああ、うん…」
そうだ、何もなかったフリをすればいい。
俺の身に起きている異変も、潤がここへ来たことも、全部…