第18章 Emotion
全てを脱ぎ捨てた肌の上を、潤のネットリと絡み付くような視線と、敏感な部分を的確に撫でる指が這う。
理性をなくした身体に、制御なんて出来る筈もなく、潤の与える快感に、身体を震わせた。
流されたくないのに…
油断すれば漏れそうになる声を、両手で口を塞いで堪えた。
なのにそれすらも許さないとばかりに、潤は俺の両手を口から引き剥がすと、強い力で床に張り付け、半ば強引に身体を繋げた。
「あっ…、あぁぁっ…」
一度タガが外れてしまったら、後は激流に飲まれるように快楽の波に身も…、心も投じるしかなくて…
堰を切って溢れ出した声は、徐々に嬌声へと変わり、抑えの利かなくなった身体は、与えられる快感を貪るように揺れた。
「愛してるよ、智。お前は俺の物…」
事を終え、潤が身形を調えながら、硬い床の上に無様に身を投げ出す俺に向かって囁く。
きっとその言葉に偽りはない。
…いや、俺自身がそう信じたかっただけかもしれないけど…
そうじゃなきゃキス一つ交わすことのないセックスなんて、金で俺達を買っては、自らの性欲を吐き出すだけの、愛のないセックスに耽る金持ち野郎と同じじゃねぇか…。
「じゃあ、そろそろ俺帰るね?」
来た時と同じ、濃い色のサングラスをかけ、オーダーメイドのジャケットを羽織った潤が、俺を振り返ることなく玄関へと向かう。
丁寧に磨き上げられたエナメルの靴に足を通し、玄関ドアを開いたその時、急に何かを思い出したように足を止めた潤は、やはり俺を振り返ることなく、
「お友達…ニノ、だっけ? 言っといてくれる? 余計なことするな、って…」
「それ…、どういう意味…だ…」
「智のことが大事なんだね? 智への指名、自分に回せってさ…」
「えっ…?」
「最初は早く借金を完済したくて、そんなことを言い出したんだと思ったけど、どうも違うみたいでさ。笑っちゃうよね、そんなことしたって、何の得にもならないのに」
ニノが俺の知らない所でそんなことを…。
あの…バカが…
「でもごめんね? 俺はくだらないお友達ごっこに付き合う気は、これっぽちもないから。友情なんて言葉、俺は信じないから…」
吐き捨てるよう言った潤は、静かにドアを閉め、部屋を出て行った。