第17章 Betrayal…
思いがけず図星を突かれた俺は、もうそれ以上何も言うことは出来なくて…
「ああ、そうだよ…、惚れてるよ…、悪ぃかよ…」
それでも意地っ張りな俺は、雅紀相手に強がって見せる。
きっとそれすらも、十年来のダチはお見通しなんだろうけどな?
「だ、大体だな…、お前がどんだけ努力したって、俺たちみたいな関係にはなれねぇんだよ…。悔しかったら、逆立ちして腹踊りでもしてみやがれってんだ…」
俺は差し出された雅紀の手を借りることなく、無残にひっくり返ったエグゼクティブチェアを起こすと、そこにドカッと腰を下ろした。
「つか、時間だろ? こんな所で油売ってねぇで仕事しやがれ。サボった分給料から差っ引くぞ? いいのか?」
「えっ、それは困る!」
給料と聞いて慌てたのか、雅紀が急に慌てた様子でバタバタと部屋から飛び出して行く。
ったく、相変わらず騒々しい奴だぜ…
「つか、あの力加減馬鹿男め…、思いっきり殴りやがって…」
ま、そのお陰で目が覚めたけどな…。
ついでに、俺がどれどけ智に対して本気だったか…、改めて自覚もさせられたし…
これもある意味“怪我の功名”ってやつなんだろうか…
俺は片隅に置かれた封筒を手に取ると、所々皺になってしまった報告書と、十枚はあるだろか写真を取り出し、デスクの上に広げた。
ニノが行方を晦ましたのは、ニノ自身の借金の問題が一番大きい筈だ。
でもそこに智が絡んでいることは間違いなくて…
だとしたら、ニノは智のために?
それならニノがあえて今の状況に身を置いている理由は分かる。
だが智は…
そうしなければならない理由はある筈だ。
ただ残念なことに、俺にはその“理由“ってやつが
さっぱりが分かんねぇ…
「なあ…、何があった、智…」
問いかけた所で、答えなど返って来る筈もない、写真に写る智の横顔を指でなぞってみる。
その時、俺は写真の片隅に写る、一人の若い男に目を奪われた。
「コイツ…、どこかで会った覚えが…。確か…、そうだ…」
俺は直ぐ様スマホを手に取ると、アドレスの中からただ一人の番号を開いた。