第16章 To a new stage...
どこかで予感はしてた。
この仕事が終われば、ダンサーとしての俺は必要無くなるだろう、って…
でもいざその現実が目の前に突き付けられたら、やっぱり正常な神経ではいられなくて…
潤とは違う男の運転する車に揺られながら、瞬く間に流れて行く幾つものネオンを車窓から見ながら、
今なら逃げ出せるだろうか…
次の信号が赤に変わったら、その時…
ふと、そんなことを思ってしまう。
そんな勇気、俺にはないのに…
「どうしたの? 何かあった?」
部屋に戻っても、一言も発することなく、ただ呆然とキッチンの片隅で膝を抱えた俺を、ニノの不安そうな顔が覗き込んだ。
大したことじゃないさ…
気にしないでくれ…
本当はそう言いたかった。
ニノに心配かけたくなかったし、それに知られたくなかった。
でも肩を叩かれた拍子に、俺の手からカサリと落ちた小さな紙切れが、それを許さなかった。
「ねぇ…、これ…どういうこと…? まさか智…?」
俺の肩を掴んだニノの手に力が入る。
「駄目だよ、智…。こんなの絶対駄目…」
「俺だって…出来ることならそうしたいよ…。でもさ、俺、アイツには逆らえないからさ…」
「で、でも、だからってこんなの…酷いよ…」
ニノの目から、とうとう涙が零れ落ちる。
「なんだよ、どうしてニノが泣くの?」
本当は俺だって泣きたいのに…
「智は…平気なの? こんなこと、翔さんが知ったら…」
「平気なわけないじゃん…。怖ぇよ…、すげぇ怖いし、不安だし…。それにさ、翔のこと考えたら、泣きたくなる。でもさ…もうどうしようもないんだよ…」
この先自分がどうなって行くのか…、それを考えたら怖くて怖くて堪んなくて…、声を上げて泣きたいのに、なんでだろう…涙も出ないや…
「智…」
「バ、バカ…、んな顔すんなよ…。ってか、お前だって…」
「俺は…、元々ウリやってたから、慣れてるって言うかさ…。でも智は違うでしょ?」
そう言ってニノは、俺の肩をそっと自分の胸に抱き寄せた。