第16章 To a new stage...
ニノと俺に宛がわれたのは、二人で暮らすには決して広いとは言えない、1Dkの一室だった。
当然プライベートな空間なんてのは持てる筈もなく、どちらかが出かけている時以外は、それこそ一つのベッドで眠るくらい、身を寄せあっていた。
そうやってお互いの寂しさを紛らわしていたんだと思う。
それでも夜になると、電話で呼び出されたニノが、迎えの男に連れられて行くのを見送ると、無性に寂しさが込み上げてきて、一人枕を抱いて眠ることだってあった。
俺、そんなに弱くないのに…
潤から知らされたオープン日が近づくと、ニノへの呼び出しは徐々に増え始め…
夕方部屋を出たきり、翌日の昼過ぎまで帰らないことも度々だった。
それもボロ雑巾のようになって…
ニノが何をしているのか、何をさせられてるのか、大体の予想はつく。
でも俺は、それを敢えてニノに問いただすこともなく…、放っておけば飯すら食わないニノのために、ただ黙って飯を作り、時間になれば、死んだように眠るニノの寝顔に「行ってくる」とだけ告げ部屋を出た。
潤が集めた、素人ダンサーのレッスンに向かうためだ。
マンションのエレベーターを降りた俺を、当然のように潤が出迎える。
そして真っ昼間にも関わらずキスを交わすと、腰に腕を回され車に乗り込んだ。
歩いても十分とかからない距離なのに、わざわざ車で迎えに来るのは、俺が逃げ出すんじゃないか…って不安があるから…なんだろうな。
現に、潤は俺の傍を片時も離れることなく、常にスタジオの片隅に座り、レッスン風景を眺めていた。
長い足を組み、指でリズムを取るその目は、サングラス越しでも分かるくらいに真剣そのもので…
潤の中にまだダンスへの情熱が残っているんだって…
潤はまだ踊りたいんだって…
そう感じる度に、俺は遣り切れない程の罪悪感に苛まれた。
潤からダンスを奪ったのは他でもない、俺自身なんだって…
そして、一通りのレッスンを終えると、潤は当然のように俺を抱いた。
踊れないことへのもどかしさと、そして悔しさをぶつけるように、乱暴に…