第16章 To a new stage...
真新しく貼られたんだろうか、微かに木の匂いが残る板をスニーカーの踵で蹴ってみる。
悪くはないが、あの踏み慣れた板と比べれば、足に伝わる感触が違う…って言ったって、そんな風に感じるのは、俺だけかも知んないけど…
「踊りたくなっちゃった?」
「べ、別に…。で、俺は何をすればいい?」
不意の問いかけに、ともすれば溢れて来そうなダンスへの欲求に蓋をした。
「実はさ、オープンに先駆けて、ショーダンサーの募集したんだけどさ、これがどいつもこいつも素人同然でね…。智にはダンサーの指導をお願いしたいな、って思って…」
なんだ、そんなことか…
「それともう一つ…」
ホッとしたのも束の間、次に潤の口から吐き出された言葉に、俺は自分の耳を疑った。
「今…何て…?」
「だから、智にはお客様の相手をお願いしたいんだけど…、出来るよね?」
潤が何を言っているのか…
その言葉が何を意味するのか…
真っ白になった頭では何一つ考えることが出来ず、俺はただただ首を横に振り続けた。
「そんな顔しないでよ。大丈夫、何も智だけってわけじゃないから。ほら、何て言ったっけ…、智の友達の…」
「ニ…ノ…?」
「ああ、そうそう二宮くん。彼にも智と同じように、この店のために働いて貰うことになってるから。って言っても、彼の場合借金もあるからね、その返済も兼ねて、ってことになるけど」
目の前が真っ暗になった。
そこに立っていることすら出来なくなる程、足元がグニャリと歪んだ。
まさか…、どうして…
人違いであってくれればいい…
黒く染まった視界とは裏腹に、やたらと白くなった頭には幾つもの疑問だけが浮かんでは消えた。
どこかで生きているとは思ってた。
例え二度と会うことは出来なくても、どこかで生きていてさえくれれば、それでいいって…
でもまさかこんな形でニノの行方を知ることになるなんて…
思いもしなかった現実に、俺は崩れるようにその場に膝を着いた。
それくらい…いや、それ以上に、潤の放った言葉は俺に強い衝撃を与えた。