第16章 To a new stage...
「智に見せたい物がある」
突然言われて連れて来られたのは、西洋の城を模したような、派手な建物の前だった。
「ここ…は…?」
助手席の窓から建物を見上げた俺は、目が眩むようなチカチカとしたネオンに、瞼を瞬かせた。
その一番目立つ場所に、ネオンこそ消えているが、ショーパブと書いてあるのが見える。
「ここ、俺の店」
「お前…の…?」
「そ、俺の。どう、気に入った?」
思いもかけない潤の言葉に、俺は運転席の潤を振り返った。
「気に入るも何も、別に俺は…」
そう…、俺には関係ないって…、そう思ってた。
でも違ったんだ。
潤は俺の肩を抱き寄せると、人目があるに関わらず唇を重ねた。
いや、そもそも潤は人目なんて気にしちゃいないのか…
でも俺は違う。
誰かに見られるんじゃないか、って…
ひょっとして翔がどこかで見ているかもしれない、って…
そう思ったら、潤に咥内を蹂躙されながら、不安になる。
決して深くはない口付けを交わし、唇を離した潤くんがニヤリと笑う。
「実はさ、智に手伝って貰おうと思ってさ」
「は、はあ? ちょっと待て…、手伝うって言っても、俺…」
表に出るようなことはしたくないし、ましてやショーパブなんて…
「くく、そんな困った顔しないでよ…」
「いや、だって俺はもう…」
「分かってるよ、ステージには立ちたくないって言いたいんでしょ? 智の考えてることなんて、お見通しなんだから」
まるで俺の心を全て知り尽くしたような物言いに、背筋が寒くなる。
昔からそうだ、潤は俺の考えてることを先回りして口にすることがある。
俺はそれが嬉しくもあり、たまに怖く感じでいた。
「で…、俺に何を…」
「難しいことじゃないよ。着いて来て?」
車を駐車場に停め、先に運転席を降りた潤が助手席のドアを開けてくれる。
でも俺はどうしても車を降りる気にはなれなくて、不安に揺れる目で潤を見上げた。