第15章 Signs...
改めて涼介のダンサーとしてのポテンシャルに気付かされた俺は、思い切って涼介を坂本に託すことを思いついた。
智がそうであってように、坂本なら涼介の未知の可能性を引き出してくれる、そう思ったからだ。
それからもう一つ、隣町とは言え、例の店の影響は少なからず受けることになる。
いや、もしかしたら想像以上の窮地に追い込まれる可能性だって否めない。
そのためには、智と同等…、若しくは智以上のダンサーが必要だった。
涼介をメインダンサーとして据えたものの、やはりまだその未熟さは、メインを張るには程遠ささえ感じさせてしまう。
何より、”魅せる”ことを知らないうちは、固定のファンなんてもんは掴みようがない。
本当なら雅紀の判断も仰ぎたいところだったが、俺は雅紀の帰りを待つことなく、涼介の一番の魅力でもある、そこらへんの女どもにも引けを取らないそのルックスを活かしつつ、テクニックは勿論のこと、”魅せる”ことへの重要課題にもなる表現力を兼ね備えたダンサーに育てるよう、坂本に依頼した。
坂本は最初こそ渋い顔をしたが、俺が見込んだダンサーならば、最終的には俺の頼みを聞き入れてくれた。
涼介自身も、自身のスキルアップに繋がるのならばと、忙しい合間を縫ってレッスンに通うことを受け入れた。
全ては劇場を守るため…
そう言えば聞こえは良いかもしれないが、実際はそうじゃない。
智のためだ。
智がいつ戻って来ても良いように、いずれまたこのステージに立てるように…、俺が劇場を守らなくては…、そんな使命感ってやつにに駆られていた。
尤も、智が聞いたら、
「青くせぇこと言ってんじゃねぇよ、バカ…」
なんて一蹴されるんだろうけどな(笑)
それでも俺は守りたい…、いや、守らなきゃなんねぇんだよ、智が唯一“智”として生きられる場所をな。
そのためなら俺は何だってするし、何だって出来る。
…なんて、格好良いこと言ってるけど、その実、そうでもしていないと、俺自身がダメになっちまいそうだったから…、なんだろうな…