第15章 Signs...
店舗入り口の前までタクシーで乗り付けた俺達は、まるで西洋の城を模したような外観の派手さもさることながら、車から降りた俺達を優雅な仕草で出迎えた、所謂”黒服“の見た目のクオリティの高さだ。
見るからに品の良いスーツをビシッと着こなしたその出で立ちと、身のこなしは、さながら貴公子といったところだろうか。
「ようこそ、お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
受付を済ませた俺達を、また別の男がホールへと案内する。
「ほぇ~、すげぇ~」
黒大理石の床と、一面ガラス張りの通路を進みながら、雅紀が溜息交じりの声を漏らす。
思わず肘で小突いて咎めたが、正直溜息を漏らしたくなる雅紀の気持ちも分からなくもない。
それくらい、そこは贅沢で、まるで別世界にいるような…、そんな気分にさせてくれる場所だった。
「こちらのお席にどうぞ」
通されたのは、これまた黒大理石の丸テーブルを囲むようにして並べられた、見るからに座り心地の良さそうなソファーで…
俺達はその真ん中に、それこそ袖が触れ合うくらいの距離で座った。
こんな時でも堂々と出来ないのは、俺の肝っ玉が小さいからだろうな…
「ねぇ、あの人って、良くニュースでも見かける…誰だっけ…。ほら、あの人も…」
「ああ、そうみたいだな。…つか、キョロキョロしてんじゃねぇよ」
「だって落ち着かないんだもん…」
「まあ…な…」
各界の著名人が大半を占める招待客の中で、俺達の存在は若干どころか、大いに浮きまくっている。
居心地が良い…とはとても言えねぇな…
「はぁ…」
思わず深い溜息が漏れかけた時、店内の照明が全て落とされ、聞き覚えのある曲のイントロが流れてくると同時に、丁度正面に位置するステージにピンスポなが当てられた。
「ね、ねぇ、この曲って…」
雅紀が俺の腕を掴み、乱暴に揺さぶる。
「あ、ああ…、だよ…な…?」
何度も耳にした曲だ、俺が聞き違える筈がねぇ…
でもどうして…