第15章 Signs...
「ねぇ、どうすんの? このままの状態が続けば、運営自体危うくなり兼ねないんだけど…」
慌てたのは雅紀だ。
雅紀には毎日の売り上げの管理から、ダンサーやスタッフに支払われる給料に至るまで、劇場の運営に関わる金銭の管理の殆どを任せてある。
実際、支配人の俺よりも、副支配人の雅紀の方が、経営状態に関してはかなり逼迫した物を感じていたに違いない。
勿論、俺だって策を講じなかったわけじゃない。
以前から、専属ダンサーの中では群を抜いていた涼介をトップダンサーに据え、新たなファンの獲得にも奔走した。
涼介に新規のファンが付けば、それだけ新規の顧客も増えるだろう…なんてな…
相変わらず甘っちょろい考えだよな…
それでも涼介の頑張りもあってか、盛り返し…とまではいかなくとも、なんとか危機は脱したと胸を撫で下ろしていた頃、劇場の入口に臨時休業の札を下げ、俺と雅紀はある場所へと向かった。
噂になっていたショーパブのオープニングレセプションに招待されたためだ。
今が正念場…、それは分かっていた。
でも俺も、そして雅紀も、新たに出来た店の存在は意識せずにはいられなかった。
ストリップ専門の劇場と、本来であれば酒を楽しむために提供される場である筈のパブに、性接待を目的としたショーまで用意されていて…
しかもそれが、男性ダンサーによる、男性客をターゲットとしたショーだと聞けば、当然形態は違うが、ライバル店になりうる可能性は全くないとは言いきれず…
たまたま招待状を受け取ったことで、運良く…という訳ではないが、内情調査に乗り出した、ってわけだ。
尤も、俺達が興味があるのはショーだけで、どんなショーが提供されるのか…、それさえ見届ければ、他に興味はない。
仮に手厚い接待が用意されていたとしても、俺も雅紀もそれを受ける気は、更々ない。
例えるなら、ライバル店になり得る可能性のある新店への敵情視察、と言ったところだろうか。