第15章 Signs...
智の失踪は、その日の内に、主たる劇場スタッフのみならず、ダンサーの間でも周知の事実となった。
雅紀が大袈裟なくらい…、いや、雅紀が普通なんだろうけど、泣いてそこら中を探し回ったからだ。
健永が智のスマホがメイク台の片隅に置かれていたのを発見した時なんて、恋人の俺よりも先に泣き崩れたくらいだから…
当の俺はと言うと…
どこがで予感していたことが起きた…、その現実を中々受け入れられず、ただ呆然とするばかりで…
兎に角スタッフ内に広がった動揺を鎮めないと…、とそればかり考えていた。
本当は誰よりも泣きたかったのに…
でも支配人という立場上、感傷に浸ってる暇なんて、俺にはなかった。
智の抜けた穴をどう埋めるか…、先ず最優先だった。
幸い、ニノと同じように、地方巡業を主にしているダンサーの手配がついたから良かったものの、それでも智が抜けた穴の代償は小さくはない。
劇場に足を運ぶ客の殆どは、智目当てだから…
数日は誤魔化せても、智の失踪の噂が客の間でも広まれば、当然のように客足は遠のき…
ポツポツとあった空席は徐々に増え、やがて座っている客の方が目立つようになっていった。
それには、劇場経営にはあまり口を出すことのなかった親父も、流石に黙っていられなくなったのか、度々劇場を訪れては、深い溜息を漏らした。
そりゃそうだ…、劇場の改装工事にかかった費用は、とても笑って済ませられる額じゃないんだから…
俺はこれ以上客足が遠のくのを食い止めようと、客が喜びそうなイベントを企画しては、少しでも現状を打開しようと躍起になった。
智の存在は、それ程までに大きかったんだと、俺はそうなってみて始めて思い知らされた。
そんな時だった…
健永が馴染みのレンタル衣装店である噂を聞きつけてきた。
それは、隣街に新しくオープンする予定のショーパブの噂で…
本格的なショーは勿論のこと、今までにないストリップショーまで行うという物だった。