第14章 Separation…
ネットリと絡み付いてくる舌先に咥内を蹂躙され、頭の芯がぼんやりと蕩けていくような…、そんな感覚に襲われる。
でもどうしてだろう…
全然気持ち良くねぇや…
あの頃感じていた、潤からされるキスの気持ち良さが、今は全く感じられない。
寧ろ嫌悪感しか感じない。
あんなにも潤からキスされることが嬉しかったのに…
次第に潤のシャツを掴んでいた手から力が抜け、息苦しさから意識が飛びそうになった時、漸く離れて行った潤の唇の片端が、俺の丁度視線の上でニヤリと持ち上がった。
そして、ゆっくりと身体を起こした潤が俺を引き起こし、腕の中に抱き竦めると、俺の首筋をペロリと舐め、
「ベッド、行こうか?」
耳元に、ゾクリとするような低さの中に甘さを含んだ声で囁いた。
勿論俺に拒否権なんてもんは存在しない。
うん、と小さく頷いて、いつの間にか覚えてしまった、男を誘う目で潤を見上げ、潤の背中に両腕を回した。
それが潤の激昂に触れるとも知らずに…
「へぇ…、そんな仕草…誰に教わったの? アイツ…櫻井翔って奴? それとも別の男?」
「違っ…」
慌てて否定しようとした俺の前髪が鷲掴みにされ、動揺の隠せない顔が上向かされる。
「どっちでもいいや…。ストリップダンサーなんて聞こえの良いこと言ってるけど、所詮ストリッパーなんて売春婦と変わんないもんね? だったらそのように扱って上げる」
感情を全く映さない、冷えた視線に背筋を冷たい物が流れ、シャツの背中を掴んだ手が小刻みに震えた。
怖い…
誰かをこんなにも怖いと思ったのは、もしかしたら初めてかもしれない。
でも逃げることなんて、俺には許されないんだ。
「どう…すればいい…」
どうすればお前の気が済む…
「そうだな…。服…脱いでくれる?」
「えっ…?」
「簡単なことでしょ? 見せてよ、俺にも…。智の綺麗な身体を…」
「…分かった」
前髪を掴んでいた手が解かれ、俺は背中に回した手をゆっくり解くと、真っ直ぐに潤を見上げたままシャツのボタンに手をかけた。