第13章 Life…
「許さねぇから…」
俺を見下ろす翔の目の奥に、赤い炎のような物が揺らめく。
それが怒りなのか、それとも情欲なのか…、判断もつかないままに俺は着ている物を全て剥ぎ取られ、外気に晒された素肌を隠すように、ラグの上で身体を丸めた。
初めて翔を怖いと思った。
どうしてそんな風に思ったのか…、それは分からない。
でも、俺を真っ直ぐに見下ろす俺の目が、酷く怖い物に感じられて…
何も言えず、そこから逃げ出すことも出来ないまま、身体をガタガタと震わせた。
すると、それまで床に着いていた翔の手が、俺の頬をスルリと撫でて…
「お前にどんな過去があっても構わねぇ…。胸の奥で誰を想ってたっていい。でもな、俺の前から勝手に消えることだけは、絶対に許さねぇから…」
どうしてそんなことを言うのか…、理由(わけ)も分からず俺は翔を見上げた。
「俺…、潤を殺した…。なのに生きてていいのか…?」
教えてくれよ、翔…
俺は本当に生きてていいのか…、教えてくれよ…
「その“潤”って奴との間に何があったのか…、そんなの俺には関係ねぇ。でもな、智…。俺はお前を誰にも渡すつもりはねぇから…」
それがこの世に存在しない奴なら、尚更…
そう言った翔の目には、ついさっきまで揺らめいていた真っ赤な炎は見えなくて…
代わりに俺を丸ごと包み込むような…、暖かな色が宿っていた。
「っだよ、それ…。プロポーズかよ…」
「くく、だったらどうする?」
「ど、どうするって…、俺は…」
どうしたいんだろう… 。
もし許されるのであれば、このままこの男の与えてくれる優しさの中で生きて行きたい。
でもそれで俺の罪が本当に消えるんだろうか…
俺だけが生きてて良いんだろうか…
潤を裏切り、傷付けた上に、潤の命まで奪った俺が…、このまま生きてて良いんだろうか…
分かんねぇや…
俺には分かんねぇ…。
でも一つだけ分かったのは、俺は今目の前にいるコイツに、少なからず惚れてる…、ってことだ。