第13章 Life…
俺は翔の顔を両手で挟み、首だけを持ち上げると、その柔らかな唇に自分のそれを押し付けた。
潤にもした事の無い、初めてする自分からのキスに、心臓がバクバク打ち付ける。
「ふっ、まるでガキのキスだな?」
唇を離した翔が、揶揄うように言う。
「う、うるせぇ…、自分からしたのなんて、初めてなんだから仕方ねぇだろ…」
言いながら、顔がどんどん熱くなるのが分かる。
そんな俺を見て、翔は更に肩を揺らすと、俺の髪を乱暴に掻き混ぜた。
そして前髪を掻き上げた俺の額に、そっとキスを一つすると、逞しささえ感じる胸の中に、俺をスッポリと包み込んだ。
「捕まえた」
「えっ…?」
「お前は俺のモンだって言ってんだよ」
「は? 何言って…」
「だーからっ! どこにも行くなって言ってんだ。もし、お前がどうしてもその“潤”って奴のトコに行きたくなったら、その時は俺が連れてってやる。それまで俺はお前を絶対に離すつもりねぇから…」
「っだよそれ…。勝手に人の人生決めてんじゃねぇよ…、バカ…」
恥ずかしくて…、照れくさくて…、俺は翔の胸に顔を埋めると、決して許されないと分かっていながら、その広い背中に腕を回した。
今だけ…、少しの間だけだから…
いいよな、潤…?
その晩、俺は初めて翔に抱かれた。
潤との、ただ我武者羅に身体を繋げただけの、幼く辿々しいセックスとは違う、余裕さえ感じさせるような、大人のセックスに、俺は身体だけじゃなく心までをも、翔に与えられる快楽に震わせた。
尤も…、翔は額に無数の汗の粒を光らせ、俺を抱きながら、
「やべぇ…、余裕ねぇ…」
何度も繰り返してたけど。
幸せ…だった。
誰かと繋がることが…、身体だけじゃなく、心まで一つにしてしまうような…、俺に「生きろ」と言っているような、深くて熱い繋がりを、初めて幸せだと感じた。