第11章 First contact…
「驚かせてしまって済まなかったね。でもこうでもしないと、中々君会ってくれそうもないから…」
錦織はまるで潤のことなんて視界に入っていない様子で、俺の肩に手を置くと、人の良さそうな顔で笑った。
やめろ…
「思ったより小柄なんだね? それにビジュアルも悪くない」
だからやめろって…
「それにダンスの腕も、まだまだ粗削りではあるけど、中々のもんだ」
やめてくれ…、それ以上言うな…
俺は横目で隣りに座る潤を見た。
潤は表情にこそ表さないが、その目は怒りに満ちているようにも見えて…
「あ、あのっ…、こっちから連絡するんで、返事はそれまで待ってくれませんか? お願いします」
頭を下げる俺を見て、錦織は一つ息を吐き出すと、その時になって漸く潤の存在をその視界の中に納めた。
そして、
「分かった。良い返事を待ってるよ」
潤に一切触れることなく、それだけを言い残して俺たちの前から立ち去った。
その瞬間から、俺達の間にはそれまでとは一変…嫌な空気が流れ始めた。
言わなきゃ…、ちゃんと潤に話さないと…
嘘をつくつもりは無い。
でもその場を取り繕おうと思えば重いほど、気持ちばかりが焦って、上手く言葉に出来ない。
「あのさ…」
「良かったじゃん…」
漸く絞り出した俺の声は、僅かに震える潤の声で掻き消された。
「え…?」
「今のスカウトってやつだろ? すげぇじゃん…。やっぱ智はすげぇよな…」
心なしか潤の声が泣いているように聞こえるのは、俺の気のせいなのか…
「こんなチャンス、そうそう転がってるもんじゃないぜ? 勿論話受けんだろ?」
それにさっきから全くと言っていい程、俺と目を合わせようとしないのは、やっぱり怒ってるから…なのか…
俺、どうしたらいい…?
焦れば焦る程、何を言ったら良いのか分からなくて…
その時になって漸く、俺は口下手な自分を呪った。