第11章 First contact…
「じゃあ…、せっかくだし、軽く合わせとくか…」
俺の親はともかく、潤の親はけっこう成績には煩いらしく、テストの一週間前は自由に外出すらことすら出来なくなると、前に聞いたことがある。
そうなると暫く潤と合わせることも出来なくなる。
俺は持って来た音楽プレーヤーをセットすると、潤に目で合図を送ってから、再生ボタンを押した。
「ワン、ツー…」
潤が指でカウントを取る。
俺はカウントを取るのが苦手だから、いつも潤の取るカウントと、自分の勘だけが頼りだ。
プレーヤーから流れる音に合わせてステップを踏み、ターンをする。
潤も俺に負けじとステップを踏み、腰をくねらせる。
…けど、足元が砂地なのが影響してるんだろうな、やっぱりいつものようなキレはない。
それでも必死で食らい付いてくる潤に、ごく自然な流れで俺の方から動きを合わせてやる。
一人で踊ってる時には、ただ自分の思うままに身体を動かしてばかりで、誰かに合わせるなんてこと、一度だって考えたこと無かったのに…
今じゃお互いの動きがピタリと合った瞬間に、ちょっとした喜びを感じるようになっている。
それもこれも、“潤”だから…
潤以外の奴と踊ったって、きっとこんな風には思えないだろうな…
なのに俺は、
「なあ、ちょっと話があるんだ」
曲が終わり、音楽プレーヤーを止めた俺は、ベンチに座ってペットボトルを傾ける潤の隣りに腰を下ろした。
「ん、何?」
ペットボトルのキャップをキュッと閉めた潤が俺を見下ろした。
言わなきゃ…
今言わないと…
「実はさ、俺さ…」
言いかけた時だった、ジャリっと砂を噛む音が聞こえて、振り向くとそこにはさっきまでベンチに座っていたオッサンが立っていて…
俺に向かって左手を上げると、胸ポケットから取り出した小さな紙切れを俺に差し出した。
「えっ、何で…?」
その小さな紙切れには、金の文字で”J's company”としっかり書かれていた。