第11章 First contact…
その日、いつもの公園に行くと、見知らぬ男がベンチに座っていた。
いつもならその時間帯に人がいることなんてなかったのに…
チッ…、先越されたか…
不審に思いながらも、俺は心の中で舌打ちして、少し離れた場所で潤が来るのを待つことにした。
その男がJ's companyの代表、錦織だとも知らずに…
軽いストレッチをしながら潤を待っていると、一台の自転車がライトを煌々と光らせながら、こちらに向かって走って来るのが見えた。
「悪ぃ、遅くなった。…つか、先客?」
自転車のスタンドを立てながら、潤が先にあるベンチに視線を向けた。
「ああ、そうなんだよ…。でも変なんだ、ずっとあの場所から動かねぇの、あのオッサン…」
「そっか…、どうする、場所変える? …って言ってもこの時間だし、他にここより条件の良い公園も近くにないし…」
腕時計に視線を落とし、潤が辺りを見回す。
確かに潤の言う通り、もうどっぷり日は暮れてるし、公園の周囲に民家はあるものの、幸いなことに、そこそこ距離が離れているから、多少大きな音を出したって近所迷惑にはならない。
ただ、これ以上遅い時間に…ってなると話は別だけど…
「俺は別にここでも構わないけど…、潤は?」
そう…、俺は踊れりゃ場所なんて関係ない。
けど潤はそうじゃない。
「うーん、そうだな…」
足元が砂地になっていることが気になっているのか、頻りに地面を爪先で蹴っては、足元を確かめているようだった。
表情からも、潤が乗り気じゃないのが見て取れた俺は、
「今日はやめとくか…」
仕方ない…
自転車のカゴからキャップを取り出し、頭に被った。
でも潤は俺の頭からキャップを取り上げると、
「いや、折角来たんだし、少し踊ってこうぜ? 期末も近いし、来週はあんま時間取れないからさ…」
ウィンクを一つ投げて寄越した。
その時になって、俺は来週末に控えた期末テストの存在を思い出した。