第11章 First contact…
結局、その場ですぐに答えを出すことなんて、到底出来る筈もなくて、後日連絡するとからと言って、連絡先だけを聞いて電話を切った。
そもそもプロダンサーになんて興味なかったし、そのうち時間が経てば忘れるだろうって…、こっちから連絡さえしなければ、俺のことなんて忘れるって…
だから潤にもJ's companyから電話があったことは言わなくてもいい…
言う必要はないと思っていた。
でもそんなの俺の勝手な思い込みで…
その後も錦織は何度も電話を寄越し、ついにはどうやって母ちゃんから聞き出したのか、俺の携帯にまで電話をかけて来るようになった。
「君には才能があるんだ。俺はその才能に賭けてみたいんだ」
そこまで言われると、いくら興味のない俺でも、流石に嫌な気分はしない。
寧ろ、自分が…自分のダンスが認められたことに、喜びさえ感じていた。
ほんの遊びのつもりで始めたダンスだったけど、本気で極めてみたいとも思うようになっていた。
ただ潤のことだけはどうしても気掛かりで…
「潤も一緒じゃ駄目ですか?」
電話の度に尋ねた。
でも答えは決まって同じ…
「俺が欲しいのは、君のその天性とも言える才能だけで、他には何もいらない」
そう繰り返すばかりだった。
もうそうなると俺には二つの選択肢しか残っていなくて…
散々悩みに悩んだ結果、俺は潤ではなくダンスを選んだ。
そこに理由なんてない、
ただ公園の片隅なんかじゃなく、もっと広い場所で、思い切り踊ってみたい…
その思いだけだった。
潤ならきっと俺の気持ちを理解(分かって)くれる筈…
同じ世界を志した潤なら絶対…
だから俺は、散々悩み抜いた末、潤にJ's companyからスカウトの電話があったことを打ち明けようと決心をした。
でも…
潤に告げるよりも前に、アイツ…錦織は俺達の目の前に現れたんだ。
それも何の予告もなく突然に…