第10章 Rainy kiss…
それからというもの、俺達はほぼ毎日連絡を取り合うようになった…と言っても、殆どが松本が一方的に送り付けてくるだけで、俺はそれに一言二言返すだけだったけど…
別に話しなら学校でだって出来るし、それに公園に行きさえすれば、嫌でも顔を合わせるわけだし、わざわざギガ消耗してまで話する必要はないんじゃないか、ってね。
正直、面倒臭いとさえ思っていた。
でもそれもほんの最初の頃だけ。
気付けば松本からのLINEを心待ちにしている俺がいた。
松本からの連絡がない日は、俺の方からメッセージを送るようにもなっていた。
俺は松本のことが嫌いじゃなかった。
いや、寧ろ好きだった…のかもしれない。
ダンスと言う共通の趣味に、音楽の好みだって良く似てて…そして何より松本といると、何一つ飾る必要のない、素の自分でいられるような気がしたから…
俺達は暇を見つけては、お互いお気に入りの曲を持ち込み、公園の遊具やベンチをステージに見立てては、時間を忘れて身体を動かした。
スマホで動画を撮り合っては、お互い馬鹿みたいに褒め合って…、時には駄目出しをすることだってあった。
松本と過ごす時間、それはとても楽しい物だった。
そんな俺達の関係が少しずつ変わり始めたのは、高校二年になって間もない頃だった。
放課後が待ち遠しくて、授業を終えると猛ダッシュで家に帰り、落ち着き間もなく公園へと急いだ。
公園に着くと、潤は既に軽く身体を動かしていて、俺がキャップを開けたペットボトルを差し出すと、美味そうに喉を鳴らした。
「あ、そうだ。いい曲見つけたんだ。聞いてみる?」
「ああ、聞かせてくれ」
最近入手したと言う松本お奨めの曲を、一つのイヤホンを分け合って聴いていた、その時だった
それまで透けるように青かった空が、突然厚い雲に覆われたかと思うと見る見る灰色に変わり、ポツリポツリと降り出した大粒の雨が地面を濡らし始めた。