第2章 Frustrating feeling…
程なくしてやって来たニノは、両手いっぱいにスーパーの袋を下げていて、俺はそれを受け取ると、部屋に上がるよう促した。
「智は? 寝てるの?」
リビングに入るなり心配そうに寝室のドアに目を向ける。
「あ、熱は? 高いの?」
「しっかりとは計ってないけど、そこそこあるんじゃねぇか?」
そもそも家に体温計なんて物がないから、計りたくても計りようがない。
「そう…なんだ…。ちょっと見てきてもいい?」
「ああ、構わないよ」
本来他人を寝室に入れることは好きじゃないが、ニノは特別だ。
それにこの状況だし…
「起こすなよ?」
リビングから寝室へと続くドアを開けるニノの背中に声をかける。
「うん」と小さく頷いて、照明を落とした部屋に入って行くニノの後ろ姿を見ながら、俺はソファーに腰を下ろして、缶に残っていたビールを一気に喉に流し込んだ。
「まっじ…」
すっかり温くなったビールは、ただ苦さだけを口の中に残した。
「ねぇ、熱かなり高そうだけど、病院連れてった方がいいんじゃない?」
声のトーンを抑えた、でも動揺を隠し切れないニノの声に、PCの電源を入れようとして伸ばした手が止まった。
「病院か…。でも俺飲んじまったしな…」
出来ればそうしてやりたいけど、出来ない理由が他にもある。
智には所謂”保険証”ってやつがない。
手続き上面倒で作ってないわけだけど…。
尤も、金がないわけじゃないんだから、現金で払えば済むだけの話なんだけど。