第2章 Frustrating feeling…
ドッと疲れの溜まった身体をソファーに投げ出し、スマホを手にした俺は、ふとニノのことを思い出した。
やっべ、アイツ智からの連絡待ってんじゃねぇか…?
約束してるって言ってたし…
残りの業務を雅紀に押し付けて来た手前、先に雅紀に連絡を…と思ったが、雅紀には悪いが後回しだ。
俺はニノのアドレスを開くと、迷うことなく発信ボタンをタップした。
「もしもし、支配人?」
何度もコールすることなく聞こえた声は、若干驚きを含んでいるようにも聞こえて…
「ああ、ニノか? 智のことなんだが…悪いけど今日は諦めてくれ」
あの状態では、いくら相手がニノだからと言っても、とても外には出せそうもない。
尤も、起き上がることも出来ないんだから、それ以前の問題なんだけど…
「えっ、智どうかしたんですか?」
「まあ、ちょっとな…風邪引いたっつーか、熱出しちまってな…」
「マジで? ね、今から支配人の家行っちゃダメ?」
智と俺が一緒に住んでいることは周知の事実。
当然断る理由なんてない。
ニノに関しては特に。
他人に関心を持たない智が、ニノのことだけは心から信頼してるのを俺も知っているし…
「構わないけど…、だったらついでに買い物頼まれてくれないか?」
いつもは家事の全般を智に任せっきりの俺だから、飯を食おうにもどうしたもんかと、丁度考えあぐねていたところだった。
それに智が目を覚ました時、粥の一つも食わせてやれないようでは困るからな。
「悪いな、頼むわ」
「OK、任せといて」
ニノとの電話を切り、俺は漸くテーブルの上に放置されていた缶ビールのプルタブを引いた。