• テキストサイズ

踊り子【気象系BL】

第9章 For You…


「と、兎に角、この劇場にとってお前は必要不可欠な存在だ、ってことだ」

俺にとってもな…

耳に寄せた唇に、とんでもなく甘さを含んだ低い声で囁かれたら…それだけで身体が熱くなる。

「なあ、俺がずっと何を考えて踊ってたか…教えてやろうか?」

翔の首に腕を絡め、未だ涙の跡が乾ききらない目に、ほんの少しの色香を乗せて翔を見上げる。

すると翔は当然とばかりに、

「俺のことだろ?」

自信満々に鼻を鳴らした。

どんだけ自信過剰なんだよ(笑)

でも…満更間違ってないから笑える。

何故なら、俺がステージの上でずっと考えてたのは、他でもない、俺を抱く翔の腕、逞しい胸板、そして俺だけに向けられるその熱い眼差し…、翔のこと以外、何も考えられなかった。

「翔…、早く帰ろうぜ? 今俺、すげぇセックスしたい気分なんだ…」

身体の奥に燻り始めた小さな欲の炎が、チリチリと音を立てる。

こんなにも強く誰かを求めたことが、今までにあっただろうか…

「俺着替えてくっからさ…、だから…」

翔の首に絡めた腕を解き、期待を込めた目で翔を見上げる。

でも翔は”うん”とは言わず、それどころか

「悪いが、それは無理だな…」

険しい顔で首を横に振った。

「な、なんでだよ…?」

壁の時計を見れば、時刻はもう五時を過ぎようとしている。

「これから場所をホテルに変えて、親父が主催のレセプションパーティーが開かれることになってる」

「そんな話聞いてねぇし…」

「俺も今日親父に言われたんだ。正直面倒だし、俺だって出来ればお前と…。でもそうも言ってらんねぇんだわ…」

立場上断れない、ってことか…

それも親父さんが、翔のために開いてくれるってなれば…尚更か…

でもな、翔…

俺だってたまには我儘言いたくなる時があんだぜ?

例えば、

「なあ、そのパーティとやら、俺も同席したら…まずいのか? …つか、俺も行きたい」

こんな風にな?
/ 426ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp