第8章 理解が困難なアイツと私
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「よ。」
「……本当にくる?普通……。」
明らかに引き攣りながら出迎えた私に、ジャンは昨日と同じように、食べ物が入った紙袋を手渡して来る。
重みとフォルムで分かる。
多分、中には、パン以外にサシャの相棒も入っている。
……うん。芋。
「行くっつったら来るだろ、普通。」
「そうじゃなくてさぁ……。」
ブツブツ言いながらも、招き入れる私は、どう考えても浅はかだ。
けれど、ジャンの行動に、何故か、抗えない何かを感じてしまう。
多分、それは「弱味を握られている」から。
私の思いは、ただ一つ。
「早く解放して欲しい」
ただ、それだけ。
ジタバタしてジャンの機嫌を損ねるのは、得策ではないだろう。
ジャンをチラリ。
盗み見る。
部屋に来るのは、まだ2回目のはずなのに、あろう事か、ジャンは既に馴染んでいるようにも見える。
調査兵団のロゴが背中に入ったジャケットを脱ぎ、ハンガーに掛けて、さも当たり前かのように昨日と同じようにベッドに腰を下ろす。
部屋の主人は誰だ。と言いたくなる程に自然な動き。
「何固まってんだよ。食わねぇのか?」
「……食べるわよ。」
仕方なくといった感じで机まで行き、袋を置いて、中身を確認する。
パンとお水、そして。
うん、やっぱり芋だ。
机の上に、取りやすいように分けて並べようと思ったけど、
いや。と思い直す。
気の利かない女っぷりがマイナスポイントになって、もしかすると、私に愛想を尽かすんじゃないか?と言う、打算が働いたからだ。
よし、そうと決まれば。
特に何もせず、昨日みたいに袋からそのまま食べてやろうじゃないか。