第1章 ※それは月夜の酔いのせい?
「……いい、のかよ?」
「ん。だってサイコー、なんでしょ?」
「……あぁ。」
頷いた美咲は呂律が回っていない。
グラグラ揺れる頭で分かる。
絶対に、確実に、冷静な判断、出来ちゃいねぇ。
「初めて、って分かったらぁ、リヴァイ兵士長にも、重く思われちゃうよねぇ〜。」
美咲の柔らかく崩れた笑顔が。
忘れかけていた、黒い感情を呼び起こす。
グル、グル、グル、頭が回って。
ギリ。奥歯を噛む。
「ジャン?」
フと俺の頬に伸びて来た、白くて華奢な、小さな手。
目線を美咲に戻すと、花が咲いたように笑っていて。
「初めては、ジャンと。」
目を見開いた俺に、美咲は、にへ、と笑った。
柔らかく崩れた笑顔が。
警戒心のカケラもない笑みが。
全てを許してくれそうな顔が。
引き金だった。
そう、まるで俺の胸のど真ん中に、ズドン。と、火が出るような豪速球を放り込まれたような、感じ。
……敵わねぇ。
つーか、あぁ。
落ちた。
そんな言葉が、すとんと胸に収まった。
甘く妖しい光に照らされ、俺は美咲の引力に捕まってしまった。