第8章 理解が困難なアイツと私
最終的に、私はそのまま、いつの間にか寝ていて。
翻弄される。
と、いう意味の言葉を、こんなにも痛感したことは、なかった。
朝起きて、一番に私に襲い掛かったのは、全身に広がる筋肉痛だ。
主に、腰への負担が大きい。
加減もなにも、あったもんじゃない。
本気で信じられない!
……あの男。
目覚めた私は一人、声にならない叫び声をあげていた。
その元凶を作ったヤツは、しれっとした顔で。
隣で真面目に、エルヴィン団長の話しを聞いている。
朝日が昇ったか、昇らないかの時間に起きて、私の頬にキスを落とし、爽やかに自分の部屋に帰って行きやがったこの男。
「寝坊するなよ?」
と、何故か嬉しそうに笑って。
その笑顔が、いつもの意地が悪そうで、胡散臭そうな笑みじゃなかったのが、妙に印象に残って。
ジャンは、どういうつもりで私を……?
その問いは、考えても、仕方がないように思えた。
単なる欲情かも知れないし。
丁度いいオモチャが見つかったんだと、楽しんでいるのかも知れないし。
偶然握った弱味を使った、ちょっとした脅迫ゴッコなのかも知れないし。
お金を払わなくていい、娼婦替わりなのかも、知れない。
少なくとも、ミカサを好きなジャンにとって、私はただの同期であって。
恋愛感情がその行為にない事だけは、なんとなく、分かる。
そこまで、私は自惚れ屋では、ない。
だから、安心して。
勘違いして「付き合って」なんか絶対に言わないし。
ジャンの事を好きになって、ツライ思いするような、面倒くさい事にも、絶対にならない。
だから。
だから……
早く私を、解放して……。
残酷なこの世界に、
神様なんて、いるわけないんだけど、
私は祈った。