第8章 理解が困難なアイツと私
[美咲side]
……アイツ、ほんっとに容赦ない!
私は全身筋肉痛……
特に、腰の重さに苦しみながら、何とかバタバタと朝食を終えて、エルヴィン団長が前に立つ、調査兵団の集合場所まで来た。
「随分とお疲れだなぁ、美咲。」
ニヤニヤしながら挨拶して来たのは、この筋肉痛の引き金とも言える、張本人で。
キッ。と、睨み付けたまま、口の端だけ持ち上げて、微笑む。
「おかげさまで。」
楽しげに、そして、さりげなく隣に並んだジャンに。
「アンタのせいだよこのクソ猛獣野郎!!」
……と、怒鳴りつけそうになった、けど。
耐えた。
昨日は……そう、あの宣言通り、散々弄ばれて……。
何度しても止まない行為に、「もう無理」って懇願してるのに、無視されて。
意識も、時間も、あやふやになるくらい、それなのに何故か降り注ぐ感覚だけは甘ったらしくて。
ずっと、ジャンの腕の中で、翻弄され続けた。
朧げな意識の中で、ジャンの体温は心地よく、優しく、甘く、囁く言葉が響く。
「お前、ココ、好きだよな。」
「ホンット、やらしいな、美咲。」
「イケよ、我慢すんな。」
その色を帯びた囁きに、ココロまで全部持ってかれそうになるくらい。
ジャンの腕の中は、ふやけそうな程にあったかくて、甘くて。
モラルとか、常識とか。
相手は恋人でも、なんでもない。
ただの、同期だとか。
…………好きだとか、嫌いとか。
そういう私の中に根付いていたしがらみが、意味のないものとして、置き去りにされてしまった、みたい。
嬌声を何度も、何度も、上げそうになる度に、隣の部屋に、聞こえるんじゃないかって、思いながらも。
何も考えられなくなる程に、ジャンの熱を感じて。
ただただ、ジャンの体温にしがみつくだけ、だった。