第7章 ワナにハマった俺のせい?
────────────────
─────────
「……ジャン、起きて。」
ふわふわ。
ゆらゆら。
暖かいものを感じる微かな意識の中で。
声が聞こえてくる。
……んだよ。
今、すげぇ気持ちいいのに。
邪魔すんじゃねぇ。
そんな気持ちで顔を歪めると、今度は肩の辺りを軽く叩かれた。
「ジャン。ホラ、朝だよ。」
落ち着くような、ソワソワしてしまうような。
その声の主を、瞬時に認識して、俺は軽く頷く。
「……ん。」
今、俺の腕の中にいるのは、美咲だろ。
分かってるよ。
分かってるから、こんなにも暖かくて、落ち着くんだよな。
意識がぼんやりとまだ覚醒しないまま、何度も頷く。
が、今度は胸の辺りを強く叩かれた。
「ジャンー!」
美咲の声が、俺を呼ぶ。
何だか少しばかり愉快そうに聞こえちまうのは、気のせいだろうか。
……あーもぅ。
うるっせぇな。
分かったよ。
起きりゃーいいんだろ、起きりゃ。
ゆっくり瞼を持ち上げて、顔を上げると。
至近距離には、愛しい女の顔があって。
「……起きた?」
……それでいて、覗き込むような事されりゃ、さ。
ちゅ。
キスのひとつくらい、したくなるっつーもんだろ。普通。
まだハッキリと働かない頭で、美咲を見つめる。
呆然としている彼女に、俺は苦笑した。
「……お前、目くらい閉じろよ。」
窓から差し込む太陽の灯りから察するに、かなり早い時間ではある。
このまま情事まで持ち込んでもいいんだが、生憎部屋に戻らねぇと後が厄介だ。
規律がどうだ、とかな。
恋人同士なら許されるんだろうが。
残念に思いながらも一度だけ、美咲の頭を撫でて、ベッドを抜け出す。
伸びをすれば、気持ちばかりか、脳に酸素が行き渡っていく気がした。
もう一度、触れたくなって、美咲の頭に手を乗せる。
「起こしてくれてありがとな。じゃ、あとで。」
それだけ言って部屋を出ようとした、ら。
「ま、待って!」
背中に飛んできたのは、慌てるような、美咲の声。
振り返ると、何故か口ごもっている。