第7章 ワナにハマった俺のせい?
そのつもりだった。
……が、我慢出来なかった部分も、ある。
いや、だって無理だろ普通?
とろけそうな顔をして、いやいやと首を振る姿なんか、もう……煽ってるとしか思えねぇし。
美咲に「相性いい」とは言いはしたが、これほどまでとは……。
いや、あいつも俺も、まぁ、お互い初めてだったから他と比べようなんかねぇけど。
たが、肌が合うのは事実な訳で。
なんなんだろうな、美咲の仕草は、一々俺に火を付けてくるもんだから、おかげさまで俺も密かに倦怠感が残っている。
訓練や兵団での仕事より、激しく身体を動かした昨晩の出来事。
まぁ、仕方ねぇか。
だが、目論見は達成されたと言ってもいいだろう。
ここから先は、距離を埋める作業だ。
否が応なく、俺との夜を、擦り込む作業。
夕方になったところで、俺は馬の手入れをしていた美咲に、声を掛ける。
「今日はどうする?」
「どうもこうもしないわよ。寝る。」
こちらを振り向こうともせず、即座に断りを入れる彼女。
思わず笑いそうになっちまった。
身体は素直な反応見せてたっつーのに、心は違うようだ。
やっぱ、一筋縄じゃいかねぇな。
……ま。想定内なわけだが。
「じゃ。終わったら飯持って行くから。」
言った瞬間に、強引に振り返らせた美咲の、湿り気を帯びた視線を凝視する。
じとり。とした目の意味は理解している。
だからこそ、俺は貼り付けたように、余裕の笑みを浮かべてやる。
美咲の顔が歪む。
あぁ、面白れぇ。
俺は更に口角のシワを深くした。
……嫌がってる顔っつーのも、案外いいな。