第6章 別人なアイツに捕らわれた私
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そもそも、外に出ると思ってたから、私はドアを少しだけ開けて「ちょっと待って、ブーツ履くから」って、言おうとしたんだ。
なのに、私がドアの隙間から顔を出したら、ジャンは当たり前のようにそれを引いて、手に持った紙袋を、ガサガサ鳴らしながら、兵団支給のブーツを脱ぎ出した。
「え?ちょ……?」
戸惑う私に、持っていた物を「ん」と手渡す。
袋の中を見ると、部屋で食べたかったパンと飲み物、そしてアルミンの宝物だった外の世界が書かれた本が入っていた。
ん?
何でアルミンの本が?
明日でも良かったのに。
ジャンに訪ねてみようと振り返ったら、彼はもうジャケットを脱いでいて、何故だかこの空間に馴染んでいるような姿に、何も言えなかった。
「あー。なんか喉乾いちまったな。」
「え?」
「水。」
「う、ん。」
まぁ……。
ジャンはあそこから動く様子はないみたいだし、何を今言っても無駄か。と思え、おずおずとジャンのところまで、さっき渡された飲み物を届けに行く。
……と。
「きゃッ……」
いきなり、ジャンに抱き寄せられた事で、手に持っていた文献が。
バサバサ。
床に落ちる音がして。
ちょっと!何してるの?
……という前に、小さく、まるで消え入りそうに。
「……美咲。」
切なげな声で、名前を呼ばれた。