第6章 別人なアイツに捕らわれた私
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ごちゃごちゃ考えたくない事がある時の方が、解散が早いってどうよ……?
外はまだ、夕焼けが綺麗なくらいの時間。
こんな時間に終わるなんて、奇跡に近い。
雑念を振り払うかのように動き回っていたおかげで、お腹は空いてるから……別にいいけど。
朝食は気分が乗らなくて、サシャにほとんどあげちゃったから、早くなにか食べたい。
でも、食堂には行きたくないし、こんな日は部屋でダラダラ日頃の疲れを労わりながら、パンを齧るのが一番だ。
味気ないとはみんな言うけど、地味に私は配給のパンが好きだから、至福の時間を楽しみながら、苛立ちを発散したかった。
苛立ちの理由はもちろん、後ろから腕を掴んできた、この男。
「何急いでんだよ。」
「…………。」
無視よ、無視。
心の中で唱え、私は、振り向く事さえしなかった。
すると、そっと、メモが視界に入って来た。
ジャンから差し出されたものだ。
嫌な予感しかしないその紙切れ。
それを開いて、絶句した。
【迎えに行くから、部屋で待ってろ。拒否権なんてねぇぞ。理由は……分かるよな?】
……いやに綺麗な字さえ腹立たしい。
確かにアイツは訓練兵時代、座学の成績も良かったけど。
私は勢いよく手を振り払うと同時に、振り返り。
キツく、ジャンを睨んだ。
「お前の事、ぺらっぺら喋っても構わねぇてーんなら、別に断ってもいいんだぜ?」
「?!」
理不尽すぎる!!!
嬉しそうに。
爽やかそうに。
その笑顔と口から出てくる、言葉のギャップが酷い!
青ざめる私の方を、ポン。
叩いて、ジャンは楽しそうに言った。
「いい子で待ってろよ?」
「…………。」
あぁぁあぁあぁあ!!
思い切り殴り飛ばしてやりたい!!!
なんて出来るはずもなく、歯を食いしばって頷いた。