第6章 別人なアイツに捕らわれた私
ひとつだけ、分かった。
やっぱりあの夜、私はジャンと飲みに行ったんだ。
そして、コニーの話しからすると、リヴァイ兵長は私とジャンが飲みに行った事を知ってるんだ……?
あぁ。
せっかく話す事が出来たのに。
しかも、よりによって。
何だって私、ジャンとあんなことに。
後悔してもしきれない。
さっきの、ヤツの様子で分かる。
これから、あのネタで散々な目に遭うであろう事が、容易に予測出来た。
……って言うか。
ジャンもジャンよ。
ミカサの事が好きなのに、わざわざ私なんかに手を出さなくても良かったんじゃないの?!
たとえ、ジャンが言った事が……
本当だとして、私から誘った前提だとしても。
記憶がなくなるくらい酔っ払てた私の言う事に、進んで乗っかることはないじゃない!
「あー。ダメだ……、ムカついてきた。」
口に出すと余計に実感。
きっかけを与えたのが私だとしても、結局は、どっちもどっちなわけだし。
しかも私なんか、初めてだったのに。
なのに、どうして私ばかりが弱味を握られた立場になっているんだ。
ツカツカと歩いていき、席に着くと、ジャンが心配そうに話し掛けてきた。
「具合でも悪いのか?」
「…………。」
無視だ、無視。
こんな胡散臭そうに心配するヤツがどこにいる。
いや、ここにいるけど。
話せば苛立ちが高まるに決まってる。
私はジャンの方を見向きもせずに、パンを手に取り、食べかけの朝食を少しずつ済ませていた。
隣で、ジャンが不敵に笑っていた事にも、気付かずに。