第6章 別人なアイツに捕らわれた私
「……ったくアイツ、爆発したらいいのに!」
絞り出すような声で、目の前の壁に拳を押し付ける。
一旦クールダウンする為に立ち寄った手洗い場で、私は自分のバカな行いを呪っていた。
勢いよく水を出し、バシャバシャと手を洗っていると、背後から肩を叩かれた。
「あれ、美咲?ってお前、水!」
ギョッとした顔で慌てた様子のコニーが、桶の中に突っ込んでいた私の手を掴む。
「お前、何零したのか知んねぇけど、その洗い方はねぇだろ?ほら、お腹んとこまでビショビショになっちゃってるじゃねぇか。」
「え、あ、うわー……ホントだ、ごめん……。」
「いや、俺に謝られても困るけど、どうしちまったんだよ?ボーッとして。」
「あ、ぇ……ははっ……。」
あんたと仲が良い意地悪なアイツと、不本意にもカラダの関係を持ってしまい。
それをネタに、面白がられて脅迫されてまーす。。。
……なんて、言えるはずもなく。
私は深い深い、溜息を吐きながら、近くに置いてあった手拭いで手を拭いた。
「あ、そうだ。この前ジャンと、どこ行ったんだ?」
「ブッ……!!!」
あまりにも唐突に投げられたアイツの名前に、分かりやすい程に動揺して、吹き出してしまった。
……口から心臓が出てしまいそうだった。危ない。
サシャからは何も言われなかったのに、一体全体、何でコニーが。
「……何の事?」
「一昨日の飯の後だよ。飲み直すー!とか言ってたから、リヴァイ兵長が怒ってたぞ。」
「……う、嘘?」
「ホントだって。まだ酒が飲める歳じゃねぇんだからよぉ。昨日も、帰ってくんの遅かったし。」
「そ……そ、だよね。でも、一昨日はどこにも行ってないよ。昨日は、朝からちょっと……出掛けてた。」
ドクドクと心臓が早くなったのは、コニーの口から、憧れのヒトの名前が出たからで。
でも、それはあんまり聞きたくなかった話し。
これ以上、リヴァイ兵長の事を聞きたくなくて、「心配してくれてありがとう」とだけコニーに伝えて、私は手洗い場から離れた。