第6章 別人なアイツに捕らわれた私
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休み明けはなんとなく億劫なものだ。
けれど、今日は特別、気が重い。
ジャンに会うのが、嫌で嫌で仕方がない。
……とは言っても、どうしようもない。
兵団は一緒だし、メンバーも入団当初に比べ、随分減ってしまったから。
多分、一緒に行動する事もあるだろうし。
調査兵団でいる限り、逃げ道はなかった。
「凄いクマですねぇ。どうかしたんですか?」
「……え?あ、いや、どうもしてない、よ。」
「さてはお腹が空いて、眠れなかったとか、ですね!」
正面で心配そうな顔を見せるサシャの予想が、見当違いもいいところだ。
訓練兵入団の恫喝の儀で、芋を食べ出すようなアンタと同じにしてもらっては、困る。
いや、かなり失礼だけど。
……かと言って、明確な理由を当てられたら、もっと困るのだけれど。
サシャの口からジャンの名前なんか出されたら、と想像するだけで、頭が痛くなりそう。
食べなきゃ体力が持たないのは分かってはいるのに、目の前のスープにあまりスプーンが進まなくて。
でも、幸せそうにパンを口に運ぶサシャが、私をいつも通りの気分にさせてくれたような気がした。
はずだった、のに。
「ちったぁ思い出したか?」
背後から聞こえたジャンの声に、身体は過剰に反応して、反射的にスプーンを落とした。
途端、「ブハッ!」という笑い声が耳に届いて、そろりと後ろを振り返る。
視界に映ったヤツは、まるで私の動揺を嘲笑うような素振りで。
ギリ。
奥歯が鳴る。
……ふざけてるっ!
せめてもの抵抗とばかりに睨み付けても、ヤツには全く効果がない。
私は、感情的になる気持ちを抑えながら、朝食が乗ったトレーに向き直り、落ちたスプーンを拾った。