第1章 ※それは月夜の酔いのせい?
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「呑み直そうぜ!」
「へ?アンタ、どこからそのお酒?」
「さっきの店主がお詫びに、だとさ。」
そう言って人差し指を口元に添える俺に、美咲は笑って承諾した。
足元はフラついているが、信じられないくらいご機嫌だ。
「リヴァイ兵長と話せちゃったぁ〜」
「知ってる。」
「もーね!すっごいドキドキしたぁ!」
「……へぇ。そうかよ。」
そうは言いながらも表情は明るい。
俺はこの苛立ちの正体を見て見ぬフリをしながら「どこに行くか?」と聞いた。
「ん〜どうしよっかなぁ。」
「どこかゆっくり出来るところがいいな。」
「そだねぇ。さっき凄く緊張したし。」
上機嫌で笑う美咲は俺の事を見ちゃいねぇ。
一緒にいるのが俺だと言う事は分かっちゃいるはずだが、さっきまでの兵長との時間が余程嬉しかったのだろう。
ずっとその気分を引き摺っているように見えた。
ざわざわ、騒ぐ胸が、この感情に名前を付けようと忍び寄る。
俺はワザと彼女に意地が悪い笑みを浮かべた。
「男子寮にするか?」
「えー?」
「酒、美味かったんだろ?」
「でも……男子の巣窟はキケンー!」
アハハ、と笑う美咲は酒が弱いようで、さっきの量で完全に出来上がっている。
少し押せばいけるかも知んねぇ。
邪な考えが頭の中を覆う。
俺は自然と、酔いが足にきている彼女の肩を、ソッと引き寄せた。
俺とは違う柔らかな感触。
あぁ、こいつも女なんだな。
なんて、分かりきった事を考えながら、その手に力を込めた。
すると、不思議そうな顔をして首を傾ける美咲と目が合う。
「なぁに?ジャン、どうしたの〜?」
「お前がフラフラしてっから助けてやってんだろうが。」
「そっかぁ。優しい!」
フフフ。と微笑む彼女は、きっと、正常な判断が出来ていない。
訓練中、肩は貸したことはあっても、肩を抱いた事はない。
つーか、俺は何がしてぇんだ?
美咲とどうこうなりてぇのか?
それは自分でもよく分からなかった。
ただ、隣にある体温が恐ろしく心地良かった。
それだけで十分だった、
はずなのに……