第5章 ※ワナを仕掛けた俺のせい?
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翌朝。食堂で遭遇した美咲の目元には、うっすらとクマが出来ていた。
美咲がいつものように兵舎にいる事実に安堵すると共に、思わずニヤリとしてしまう。
どうやら作戦は順調のようだ。
サシャと向かい合って朝食をとる美咲の、スプーンの動きは止まっていて。
後ろを通る時にわざと近寄り、美咲にしか聞こえないように、声を掛けた。
「ちったぁ思い出したか?」
背後で小さく囁いた言葉に、美咲は驚く程に反応を見せ、カシャン。と、大きな音を立てた。
おそらくスプーンでも落としたのだろう。
こんな些細な事で、こんなにも動揺をされて。
つい笑ってしまった。
……ら、後ろを振り返った美咲と目があった。
……おーおー。
すげぇ怒ってる。
何だか、ここまで怒りを表現されると、逆に楽しくなってきて。
追撃するかのように、美咲の空いている隣の席に、腰掛けた。
「つれねぇな。可愛かったのに。この前は。」
ガヤガヤとうるさい食堂の中。
小さく呟いた俺の言葉は多分、聞こえている。
反撃こそは全くないが、パンを口に運ぶ動きがぎこちない。
険しい顔でパンを凝視する光景は、なんともシュールで。
俺は、斜め向かい、美咲の正面にいるサシャ。
……の、前に置かれている水が入って容器を取るフリをしながら、更に一言呟いた。
「今日も、しよう。な、美咲。」
ガタン!
大きく響いた音は、美咲が立ち上がったせいで起こったもの。
驚くサシャを目の前に、慌てふためいて「ご、ごめん……」と小さく謝って、椅子に座り直すのを見ていたら……
「……プ……ククッ!」
どうにも、我慢出来ずに笑ってしまった。