第5章 ※ワナを仕掛けた俺のせい?
ギロリ。
睨み付ける美咲を、頬杖をついて見つめ返した。
美咲は少しばかり眉を下げ、悔しそうに席を立ち、それを見送り、呟く。
「……かーわいいな、アイツ。」
俺の言葉であんなにもあたふたして、取り乱すなんて。
兵舎でこんなに慌てるアイツを見たのは初めてだ。
……それにしても。
怒ってる顔すら可愛いと思っちまう俺は、かなり重症、だよな。
隣の朝食のトレーは、まだ片付けられていないまんま。
それ、食べてもいいですか?
なんて聞いてくるサシャに溜息を吐き、なんとか飯だけは守ってやる。
美咲が戻って来たのは、俺が飯を丁度食い終わるくらいの時間。
努めて心配そうな顔を作る。
「具合でも悪いのか?」
「…………。」
裏の意図をほんのり匂わせた外面に、美咲の顔が歪む。
嫌悪感、丸出し。
……意外と顔に出るんだな。お前。
どっちかっつーと、喜怒哀楽が豊かなサシャとは対照的に、落ち着いている印象の方が強かった美咲が、俺の中で少しずつ変わっていく。
何とも素直過ぎる表情をもっと見てはいたかったが、コニーに声を掛けられ、俺は席を立った。