第4章 暴君なアイツと混乱のワタシ
どっから覚えてねぇんだ?って、聞かれても。
記憶にあるのは、調査兵団の面々と別れた、場所。
で。
ジャンが……呑み直そう?って、言ってた、ような。
曖昧な、記憶しか、ないから……
「ぜ……ぜん、ぶ。覚えてない、かも。って言うか、腕、離して……。」
「あ?」
「ひッ……ち、近い近い近い!!!」
不機嫌そうな声と共に、ズイ。寄せられた顔を、必死に押し戻す。
「……んだよ。初めてじゃあるまいし。」
「……お、願いだから、離れて!!」
初めてなの!私の中では!!!
と。言いそうになったけど、ぐっと堪えて、唇を噛む。
はあ。大きな大きな溜息を吐いたジャンは、面倒くさそうに私の目を覗き込んだ。
「本当に離れても、いいのか?」
「……え?」
その質問の意味が分からなくて。
バカじゃないの?当たり前じゃない!と、眉を寄せる私。
でも、ジャンの目は、挑戦的なままで、息が掛かりそうな距離のまま、口を動かす。
「離れたら、お前の身体。丸見えになっちまうわけなんだが。それでも、本当にいいのか?」
「!!!」
慌てて身体を隠そうにも、その役割を担ってくれるものは、何もない。
自分の腕をかき抱いて、胸が見えないようにやり過ごすのが、精一杯の抵抗だった。
そんな私を見て、ジャンは失礼にも、盛大に吹き出す。